ケーススタディ
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ゲーム開発のケーススタディゲームを開発する流れとは?事例で紹介【Standard Oil Company】

1つのゲームを開発するまでにどのような流れを辿ったのか、ゲーム開発初心者の為にYAO!GAMESのStandard Oil Companyのプロジェクトの流れに合わせてご紹介します。

今回ご紹介するゲームは開発者1人 / 開発期間6週間と、極めて小規模なゲームですが、大きなプロジェクトでも大枠は似た流れが多いです。オリジナルの「ゲームを完成させてみたい!」と感じる初心者・中級者の為のケーススタディとして参考にしてください。

全体の流れとしては企画、要件定義、プロトタイプ、アルファ版、ベータ版、最終版、リリースの流れを辿ります。

企画

まず企画ではどんなゲームにするのか、なぜそのゲームが面白いのか、どんな世界観のゲームかなどプロジェクトの大枠を考え、チームメンバーを相手に壁打ちをします。具体的な項目としては例えば下記のような項目について考えます。

  • タイトル
  • コンセプト
  • 遊んでほしいプレイヤーの人物像
  • 世界観やシナリオ
  • ゲーム構成
  • クリアルール
  • コアゲームメカニック(ゴール / 障害 / 報酬)
  • 対象プラットフォーム
  • スクリーンの解像度
  • 言語

Standard Oil Companyの場合の企画内容を簡単にご紹介します。

コンセプト : 

富がインフレしながら膨れ上がる感覚を短時間で味わえるゲーム

遊んでほしいプレイヤーの人物像 : 

RTSなどのストラテジーゲームを手軽に時間をかけずに楽しみたい人

世界観やシナリオ : 

1870年代 大国になりつつある元気なアメリカの空気感。環境問題や経済格差などの現在では当たり前に議論される社会問題は存在せず、たださらに大きくさらに大きく資本主義を進めることだけに熱狂するエネルギッシュさが漂う時代に初老の男が1億ドルを元手に自分の残りの人生を使ってに石油市場の独占を目指す

ゲーム構成 : 

Factorioのような見下ろし方で手持ちのツールを組み合わせながらフィールドを構築する。

一定時間ごとに税金の支払いが発生し、支払いが行えなかった場合はゲームオーバーシーンへ移動

税金の支払いを全てクリアするとゲームクリアシーンへ移動し、スコアが表示される。

クリアルール : 

税金の支払い時期に支払い可能なだけの十分な収益が発生している

コアゲームメカニック : 

収益を作る → 新しいアイテムを得る → さらに大きな収益を得る

対象プラットフォーム : 

ブラウザ

スクリーンの解像度 : 

1920 * 1080

言語 : 

日本語(時間があれば英語対応)

どの企画も多くの人に遊んでもらえる魅力のあるゲームを作ることを目指していますが、実際には多くのゲームが僅かのプレイヤーにしかプレイされず終わってしまいます。そんな残念な結果を招く可能性を最も下げることのできるフェーズが企画です。企画段階でどれだけそのアイデアの弱点や盲点を洗い出し、より良いアイデアへと磨きをかけることが出来るか、プロジェクト全体で見ても最も重要かもしれません。

要件定義

ここでは企画したゲームを現実のものにするために具体的にどのような要素やプログラムが必要かを洗い出します。ゲームに限らずプロジェクトが進むにつれ、追加で必要な要件は増え続けますが、ここで一旦着手しようとしているゲームの全体像を認識しておくことで当初の考えに追加された要件は何かを管理しやすくなります。

大事なことは大枠を決めることではなく、現実的にどれほどのコストがこれから必要になるのかその全貌を可能な限り詳細に洗い出すことです。

手段は何でも良いですが、なるべく具体的でコミュニケーション時に解釈のずれが発生しにくい形を目指せば視覚的に情報を表すことが効果的かと思います。無料のソフトでも可能な作業なのでStandard Oil Companyの例のようにどんなオブジェクトやUIがゲームシーン内に存在し、どのように配置されているのかを検証することで、実装時に着手すべき優先順位やタスクの単位を決める際に役立つはずです。

プロトタイプ

プロトタイプでは想像上での楽しさが実際のプログラムでも楽しく感じられるか、或いは想像していた楽しさと同じ類の楽しさか、より楽しいメカニックを見つけることが出来るかなどを確認します。この時点で、楽しさを感じられずオブジェクトをきちんと作っていないこと、UIが美しくないことが楽しくならない原因だと判断するのは非常に危険です。自分以外の人間にも喜んでもらえる面白いゲームはプロトタイプ段階で既にいい感触が得られているはずです。

個人プロジェクトレベルであれば、作って確認する周期を数時間から長くても1日ほどで見積もっておくと良いでしょう。それ以上かかる場合であれば検証しようとしているメカニックが大きすぎる可能性があります。プロトタイプはあくまでメカニックのコア部分に集中し、短く何度も試すことを目指しましょう。

これはStandard Oil Companyのプロトタイプでベルトコンベアを引き、収益が発生する感覚を確かめています。自分で収益源を次から次へと増やす楽しさはゲーム上でも感じられるのかスピード重視でプログラムを作成し、結果2〜3日ほどでプロトタイプの確認を行いました。

この時点で絶望的に面白さを感じられない場合は企画が良くない可能性があります。傷の浅いうちに企画に戻って面白さを練り直すことをお勧めします。可能であればこの時点で自分以外の人にもプレイしてもらうことが出来れば理想です。

アルファ版

プロトタイプで一通り楽しさを検証すると、次はアルファ版の作成を目指します。アルファ版ではゲームのUIやオブジェクト含め、リリース時の状態を目指して作成します。一般にはステージ1〜10まで存在する場合にステージ1のみを製品版レベルまで制作します。

このように進めるのにはやはりコスト面で大きな失敗をするのを回避する為です。ゲーム開発には時間もお金も大量にかかります。なるべく間違えたらすぐに前のバージョンに戻れるようにプロトタイプ、アルファ版、と良いものかどうかを丁寧に検証しながら進めます。

YAO!GAMESではStandard Oil Companyのような超短期のプロジェクトはアルファ版までで次はリリースへ進みますが、一般にはここから別のステージも作って実際に販売する状態を目指すベータ版へ進みます。

テスト

ここまでも何度かテストプレイは挟みましたが、Standard Oil Companyではここからテストプレイが中心となりました。ストラテジーゲームなのでルールが把握できなければ楽しむ以前に「わからなかった」という感情が残るだけになります。何も言わずゲームを触ってもらい、うまく理解できなかったところ、理解が不十分だったところ、理解に時間がかかったところを観察しメモします。メモを元にチュートリアルをつけたりデザインを調整したり、操作した時にアニメーションによるインタラクションを調整してみたりしながら再度テストを行い、スムーズに理解できるようになるまでこれを続けます。

結果、チュートリアルが多すぎる、慣れている人にとってはむしろない方がいい、など別の問題へと発展するケースも多く、バランスをどのように見つけるかは開発者の判断基準に拠ります。

最終版

ここまでくるとリリース可能な最終版を作成します。

リリース可能とは、ゲーム進行を妨げる致命的なバグの捜索・修正、セーブ機能の検証、公開環境での動作確認、不自然な挙動の修正などさまざまです。この段階で新たに機能を追加することは一切なく、目指すのはただひたすら安定感です。

リリース

YAO!GAMESのプロジェクトは基本的にブラウザゲームへのリリースなので、リリース作業は難しくありませんがそれでもプラットフォーム上でのメタデータの追加、最新のビルドデータのアップ、gif動画の作成、紹介文章の作成、カバー画像の追加など必要な作業はさまざまで、初めて使うプラットフォームの場合は丸一日かかってしまうことも少なくありません。

App Storeへのリリースなどでは、審査に必要なデータはかなり多く審査が開始してから許可が降りるまで数日〜数週間かかる場合もあり、リジェクトされることも珍しくありません。リリースそれ自体にかなりの時間がかかることを想定しておく必要があります。

まとめ

今回お伝えしたゲーム開発の流れはあくまで1つの事例に過ぎず、ゲームのジャンル、開発者の数、達成したい目標、プロジェクトの予算、開発期間などさまざまな要因が開発フローに影響します。また、開発者が違えば最適なプロジェクトの進め方も変わる為、正しいといえる開発は存在しませんが、未経験、初級レベルのゲーム開発者、まだゲームを完成させたことのない方々にとって参考になればと思います。

この記事に関する質問、その他進行中のゲームに関して知りたいこと、聞きたいことがあれば是非、YAO!GAMESのDiscordにてご質問ください!

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